『 金融検査マニュアルの撤廃 』 -2016年09月28日号

◎金融検査マニュアルが撤廃される?

◆金融検査マニュアルの役割は、既に終わっている

金融検査マニュアルといえば、ここ20年ほど銀行の行う財務分析の根拠といってよいものです。

山一証券や北海道拓殖銀行の経営破たんによる金融不安の中、各金融機関がどれだけの不良債権をもっているか

=どれだけの貸倒引当を積めば、安全といえるか

を国の統一された基準をもって明らかにするものとして各融資先企業の格付け(債務者区分の決定)を行い、格付けに応じて引当金を積み上げていくという仕組みは確かに必要なものでした。

が、一方でどの銀行も金融検査マニュアルに依って取引方針を決定し、対応していくことからどの銀行も、同じような決定しか下せない弊害を生みました。

銀行の独自判断をする力が失われたため、一つの銀行がダメ、と言い出してしまうと他の全ての銀行が同じくダメ、となるため、企業側としても判断の多様性がなくなり、身動きがとりにくくなってしまったのです。

◆新たな中小企業評価の目玉

中小企業等経営強化法に基づく、ローカルベンチマークの活用による企業評価は、金融検査マニュアルによる評価と異なり

「本業の実態損益が改善すれば、評価されやすい」
「生産性の改善が証明できれば、評価されやすい」

特性をもっています。
金融検査マニュアルが、本質的に

「今企業をたたんだ場合、銀行がどれだけ回収不能になるか」

をベースにしていることと比べると、随分と異なります。
金融検査マニュアルについてはそもそも、撤廃される方向になっており、実務上は今年すでに運用されておりません。

貸倒引当については、まったく別の手法で、おそらくはより各銀行が自らの基準で計上することになるでしょう。

極端な話、例え金融検査マニュアルにおいては「破たん懸念先」であっても、新規の大口受注に対しては短期紐づき融資は行う、銀行はその貸倒を個別判断で「要注意先」相当で構わないとする金融庁はそれを「追認」する、こんな形が可能になるわけですね。

新しい企業と銀行の関係は、本来の経営改善や経済的合理性に基づくもの、要するに

「銀行にとってリスクがコントロールできる範囲で銀行にとって収益になるもの」

であれば、常に交渉余地がある、と言えます。

ただし、「企業が自ら持ちかけ、納得のいく説明をする」ことが必要です。

基本ルールを超えた話ではあるわけですから、企業経営者は自社のプレゼンターとなって、銀行が興味をもつように、説明責任は果たしていくべきだ、ということです。

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