『 事業に借金は必要か? 』 -2013年11月20日号

私達が再生のお手伝いをする企業は借金が多い。年商の半分は当たり前年商同等や年商の2倍以上という企業も存在する。ここまでに至る経緯は企業によってまちまちではあるが、大半は過去の投資が回収できずに焦げ付いてしまったものだ。

ここで言う投資と言うのは機械設備などの自社の生産性を高める目的のものや飲食店などの建設投資から在庫や売掛金など流動的投資部分を含めていっている。回収できなければ全て貸借対照表に載ってくる仕組になっている。

また中小企業特有の自己資本の少なさから投資を行う際に、大半の資金を借入に頼ってしまっているのも、破綻へ突き進む道の一つとなっている。では借金はしない方が良いのだろうか?

私は事業を行うのであれば借金はしてくださいと申し上げている。

無借金経営が一番安定している経営方法だと申し上げている方がいたが、果たしてそうだろうか?

確かに金利を支払わない部分で経常利益が上昇するというメリットと月額返済が無いという資金繰りメリットの双方がある。また赤福さんは以前無借金経営を貫いてきたため、不祥事が発覚しても金融支援を受け見事立ち直ったという事もある。これは社会的価値と財務内容の良さが起因した所が大きい。

しかしながら中小企業は先ほど申したように自己資本比率が低いのが現状である。率が少なければ当然、自己資本額も少なくなる中での無借金経営では調達余力の限界も見えている。

企業はゴーイングコンサーンとよく言われている。継続しなければならないのだ。継続していく企業になるには市場の要求を絶えず満たし続けなければならない。市場の要求に合わせて絶えず自社を変化させ、変化し続けなければならない。その為に、新たな投資は必然といるように、なってくる。

投資をするには資金が必要だ。その資金を全額自己資本で賄えるだけの体力を中小企業はもっていない所が圧倒的に多い。ここで他人資本である借入金をどの程度使うのかと検討する事になる。全額自己資本で賄えるまで待っていたら市場の変化についていけず機会を失う事になる場合もある。

私自身、借金は仕入と同様と考えている。金利が付く付かないの差はあるが、調達したものをどの様に活用して資金を増やしていくかという意味では根幹は変わらない。金利以上のリターンを求めていけばよいのだ。
例えば1000万を年利3%で調達したのであれば、1年後1100万・1500万と、キャッシュインを増やして行けば良い。

キャッシュの増える仕組みを考えるのが経営者の仕事であり、経営の醍醐味ではないだろうか? 資金繰りが続かなければゴーイングコンサーンなどあり得ない。無借金経営を目標とする事で、必要以上に他人資本の圧縮にかかり、今産み出しているキャッシュで新たな事業展開の投資をする資金を圧縮すれば、超短期的には利益が出て、財務内容が良くはなるだろう。しかし長期的展望でみた場合、無借金になった時には市場が変わり、顧客が変わり、競合との差が出来て自社が取り残された状態になっていたのでは、何の為に経営を行ってきたのが本末転倒になってしまう。

誤解の無いように言っておくが、私は決して無借金経営を否定している訳では無い。無借金経営で企業としての役割を果たしている所も数多くあるのも事実。しかしながら無借金経営という言葉だけに踊らされて、自分に縛りを掛け、借入金等の他人資本を有効活用するという選択肢を排除する事は企業の衰退を招く行為になるという事を理解して欲しい。

借入金は経営者の考え方一つで善にも悪にもなるのです。

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