『 東海地方で倒産が増加 全東信の巨額破綻が示す「粉飾決算」の恐ろしさ 』 -2026年08月12日号

経営者の皆様へ
東海地方の企業倒産が、明らかな増加局面に入っています。
2026年上半期に愛知・岐阜・三重の東海3県で発生した企業倒産は508件、負債総額は828億9,200万円に達しました。件数、負債総額ともに前年同期を大幅に上回っています。
全国でも、2026年上半期の企業倒産は5,346件、負債総額は7,340億8,200万円となりました。倒産件数は前年同期比7.1%増加しています。さらに6月単月では1,021件となり、前年同月比20.4%増という急激な増加を記録しました。
今回の倒産増加は、一部の業界や一時的な景気変動だけで説明できるものではありません。物価高、人件費上昇、人手不足、借入金返済、価格転嫁の遅れ、販売不振など、複数の問題が同時に企業経営を圧迫しています。
そして今、もう一つ警戒しなければならない問題があります。それが、経営悪化を隠すための「粉飾決算」です。
2026年最大規模となった全東信の破産
2026年7月6日、クレジットカード売上の早期決済代行サービスを手掛けていた株式会社全東信が、大阪地方裁判所から破産手続き開始決定を受けました。
負債額は2025年3月期末時点で約1,259億2,900万円とされ、2026年に発生した倒産として最大規模となりました。
全東信は、飲食店などのクレジットカード売上代金を、カード会社からの入金よりも先に加盟店へ支払うサービスを展開していました。
しかし、コロナ禍による加盟店の休業や時短営業で業績が悪化し、その後も採算を確保できない状態が続きました。さらに、通常ではカード加盟店審査を通過できない飲食店について、他人名義で加盟店契約を結んだ疑いで社員らが逮捕され、会社も書類送検されました。信用不安が広がり、資金調達にも支障を来したことが、事業継続断念の大きな要因となりました。
破産により全東信のサービスは即日停止され、同社の決済端末を導入していた一部店舗では、クレジットカードが利用できない状況も発生しました。
この倒産は大阪の企業の問題にとどまりません。東海地方の飲食店、小売店、サービス業などでも、決済代行会社や外部事業者を通じて売上金を回収している企業は少なくありません。取引先や決済代行会社が破綻すれば、本来入金されるはずだった売上金が入らず、自社の資金繰りまで一気に悪化する可能性があります。
全東信で明らかになった粉飾の問題
全東信については、預金残高の水増しや債権の架空計上などが行われていたと報じられています。さらに、決算書上には多額の営業権が計上され、関係会社との営業権取引、不動産売買、増資や配当など、グループ会社間で複雑な資金移動が行われていた可能性も指摘されています。
粉飾決算というと、売上を少し多く計上する程度の話だと思われがちです。しかし実際には、次のような方法が使われることがあります。
- 存在しない売上や売掛金を計上する
- 回収できない売掛金を正常な資産として残す
- 在庫数量や在庫評価額を水増しする
- 費用や仕入れを翌期へ先送りする
- 架空の預金残高を計上する
- 関係会社との取引で利益や資産を作る
- 本来計上すべき損失や債務を隠す
- 資産価値のない営業権などを多額に計上する
こうした処理を行えば、決算書上は利益が出ているように見えます。債務超過を回避し、金融機関から融資を受け続けることも、一時的には可能になるかもしれません。
しかし、決算書の数字を変えても、現金は増えません。むしろ粉飾を続けるほど、本当の赤字額や資金不足額が分からなくなり、経営者自身も会社の実態を把握できなくなります。
粉飾は会社を守る行為ではない
経営が厳しくなると、一部の経営者は「赤字を出したら銀行が融資してくれない」「債務超過になれば取引を打ち切られる」「今期だけ利益を作れば、来期に取り戻せる」と考えることがあります。
しかし、粉飾によって得られるのは、ほんのわずかな時間です。その代わりに、会社は非常に大きなものを失います。
第一に、金融機関からの信用を失います。粉飾が判明すれば、新規融資が停止されるだけでなく、既存融資の継続や条件変更も難しくなります。
第二に、経営改善や事業再生の機会を失います。正しい決算書があれば、返済条件の変更、追加融資、スポンサー支援、不採算事業の整理などを検討できます。しかし、決算書が信用できなければ、金融機関も支援機関も会社の実態を確認できません。
第三に、取引先や従業員にも被害が広がります。突然の破綻によって、売掛金が回収できなくなり、連鎖倒産が発生することもあります。従業員は、事前に説明を受けないまま職を失う可能性があります。
全東信の事例が重いのは、粉飾によって問題が先送りされ、最終的に1,000億円を超える規模の負債を抱えて突然破綻した点です。早い段階で実態を明らかにし、金融機関と再建方法を協議していれば、これほど大きな影響にはならなかった可能性があります。
東海地方で増えている倒産の要因
原材料・仕入価格の上昇
製造業、建設業、飲食業、小売業では、材料費や仕入価格が上昇しています。しかし、取引先との力関係や競争激化によって、十分な価格転嫁ができていません。売上は増えていても、粗利益率が低下し、資金が残らない企業が増えています。
人手不足と人件費の上昇
東海3県では、従業員の退職、採用難、人件費上昇などを原因とする人手不足倒産も発生しています。人材を確保するために給与を引き上げても、売上や生産性が上がらなければ、固定費だけが増加します。
借入金返済の本格化
コロナ禍で受けた融資の返済に加え、既存借入金、設備資金、運転資金の返済が重なっています。損益計算書上では黒字でも、借入金の元金返済は経費になりません。そのため、利益が出ているように見えても、現金が減り続けるケースがあります。
後継者不在と経営者の高齢化
業績が大きく悪化していなくても、後継者が見つからず廃業や法的整理を選択する企業があります。経営者本人の病気や体力低下によって、突然事業継続が困難になるケースも少なくありません。
取引先の倒産と売掛金回収不能
全東信のような大型倒産が起きると、その企業と直接取引していた会社だけでなく、加盟店、外注先、仕入先、金融機関にも影響が広がります。一社への売上依存度が高い企業や、入金サイトが長い企業は、取引先の倒産によって一気に資金不足へ陥る可能性があります。
粉飾が疑われる決算書の兆候
- 売上が急増しているのに預金が増えていない
- 利益が出ているのに借入金が増え続けている
- 売掛金が売上以上の速度で増えている
- 長期間回収されていない売掛金がある
- 在庫が毎期増えている
- 営業利益は黒字なのに営業キャッシュフローが赤字である
- 仮払金、貸付金、立替金が多い
- 関係会社との取引が急増している
- 営業権や無形固定資産が急増している
- 決算書と試算表の提出が遅れる
- 預金通帳や残高証明書を確認できない
- 経営者が経理内容を説明できない
一つ該当しただけで粉飾とは断定できません。しかし、複数の項目が同時に発生している場合は、決算書の数字だけで判断せず、預金通帳、売掛金明細、在庫表、借入金明細、納税状況などを確認する必要があります。
自社を守るために、経営者が今すぐ確認すべきこと
まず、決算書の利益ではなく、預金残高と今後12か月の資金繰りを確認してください。税金、社会保険料、賞与、借入金返済、設備投資を含めて、いつ、いくらの現金が必要になるのかを把握することが重要です。
次に、売掛金の回収状況を確認してください。請求書を発行していても、入金されるまでは現金ではありません。回収が遅れている取引先、支払条件の変更を求めてきた取引先、担当者と連絡が取りにくくなった取引先については、早急に与信を見直す必要があります。
また、決済代行会社、収納代行会社、フランチャイズ本部、商社など、売上金の回収を外部事業者に依存している場合は、入金経路と契約内容も確認してください。売上金がどこを経由し、どの時点で自社の財産になるのか。事業者が破綻した場合、未入金額を回収できるのか。代替する決済手段を準備しているか。全東信の破綻は、こうした確認の重要性を改めて示しました。
苦しいときこそ、正しい数字を出す
赤字や債務超過を隠したくなる経営者の気持ちは、理解できないものではありません。金融機関から融資を断られるのではないか、取引先に知られたら仕事を失うのではないか、従業員が辞めてしまうのではないか。そのような不安から、数字を良く見せたくなることがあります。
しかし、経営改善の出発点は、正しい数字を出すことです。実態を隠した決算書では、正しい資金繰り計画も、返済計画も、事業再生計画も作ることはできません。本当の赤字額、本当の債務額、本当の預金残高を明らかにして初めて、会社を残す方法を検討できます。
金融機関への相談も、資金が完全に尽きてからでは遅すぎます。相談が半年早ければ、追加融資、借換え、返済条件の変更、不採算事業の撤退、資産売却、スポンサー支援など、複数の選択肢を検討できます。しかし、粉飾を続けて信用を失った後では、その選択肢がほとんど残っていない場合があります。
会社を守るのは「見栄えの良い決算書」ではない
会社を守るのは、黒字に見える決算書ではありません。正確な数字に基づいた、早い意思決定です。
「売上はあるのに資金が残らない」「借入金の返済が重くなっている」「売掛金や在庫が増えている」「税金や社会保険料の支払いが苦しい」「銀行に本当の状況を説明できていない」「決算書の数字に不安がある」
このような状況がある場合は、問題を先送りせず、早急に自社の財務内容を確認してください。
粉飾は問題を解決しません。問題を見えなくし、会社を立て直すために残された時間を奪います。
会社を残すために必要なのは、悪い数字を隠すことではありません。悪い数字を早く把握し、まだ資金と信用が残っているうちに行動することです。
資金繰り、金融機関対応、借入金返済、経営改善計画について不安がある場合は、早めにご相談ください。会社の現状を整理し、今後取るべき対策を一緒に検討いたします。
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実際に現場でおきた話をさせていただきます。
私どもが関与し事業計画を策定し経営者の方がリスケの申出をした際の話です。
事業計画を策定する際に簡易的なDD(デューデリジェンス)を行い財務調査報告書として計画書と一緒に提出します。例えば売掛金で実際には回収できないものがそのまま計上、実際にはないものをそのまま在庫計上、実際に価値のないものを元々の価格で計上等様々なケースがあります。
今回も事業計画・財務調査報告書を作成し説明・提出をした際に今回の内容は次回決算にて修正する旨を伝え、実際に決算書を提出した際の金融機関様の対応です。
計画書を提出した際に説明したにもかかわらず、なぜこんなに〇〇が増加しているのか?
なぜこんなに〇〇が減少しているのか? 特別利益・特別損失で計上しているのか?
と聞いてきました。本部が質問をしてきて・・・と金融機関様の担当者の方が経営者の方に質問してきました。
私は何が言いたいのか?と申しますと
なぜ、計画書を提出した際にその計画を本部の方も見ているはずなのにこの様な事が起こるのか?と・・・ 何も見ていないの?・・・と疑問が残る今日この頃です。
経営者の方に質問する前に担当者の方が説明すればいいだけの話では・・・
そもそも返済計画の部分しか見ていないの?と思う事があります。
実際にそれでいいのか?と私は常に思っています。
だからこそ私たちが存在しているのです。
私は少しでも皆様のお役に立ちたいと思っています。
以上

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