『 所要運転資金を大事に 』 -2018年05月30日号
昨今、事業性評価に代表されるように中小企業への評価手法を改訂することで、新たな切り口での融資が行われることが期待されています。
その内容はインターネット上でも色々と取り沙汰されており、目にしたこともある方を多いことと思いますが、最も重要なポイントを挙げるとするならば「所要運転資金」であることは間違いありません。
◆所要運転資金はなぜ大事?
所要運転資金とは、貸借対照表から計算できるもので
受取手形+売掛金+棚卸資産-支払手形-買掛金
で算出されます。
事業上、お金になるのを待っているという最も運転資金らしいお金(受取手形、売掛金、棚卸資産)から支払義務はあるが、待ってもらっているお金(支払手形、買掛金)を引いた、理論上会社に必要な運転資金です。
そんな所要運転資金になぜ今、焦点が当たっているのかいうと
- 所要運転資金は、最終的に短期間で現預金になることが見込まれるため、融資としては担保がなくとも回収懸念が小さい
- 所要運転資金は貸借対照表上で算出することができるため、貸し手金融機関にとって必要額が分かりやすい
ことにあります。
担保に頼ってはいけない、でも貸倒をしたくない金融機関にとっては都合がよいことになります。
◆それでも、金融機関がやりたくない理由
この考え方は、実のところ昔からある融資の本来の基本です。
ではなぜ、今になって改めて採り上げられたのかといいますと金融機関からみて、所要運転資金算出に使う「棚卸資産」があまりにも信じられないから、です。
会社にある在庫が本当のところいくらの価値か、など銀行員には分かりません。
また、平成10年~18年にかけて、粉飾で棚卸資産を積み増しする企業が激増してしまい金融機関は棚卸資産を所要運転資金としてみることが困難
⇒会社の所要運転資金がなくなる⇒融資対象外になる
⇒長期マル保でのみ対応する
ことが大半となり、所要運転資金の概念を活用した融資が随分と減ってしまったのが実情です。
◆金融機関の疑念を払拭することで、融資が受けられる
私のお客さん達は、上記の「金融機関がやりたくない理由」を払拭することで融資を受けられました。
- 試算表を毎月提出、棚卸資産も毎月月初・月末を算出
- (必要に応じて)在庫帳を提出、長期塩漬けになっている在庫が限られる範囲内でしかないことを示す
- 売上見込みから所要運転資金の見込みを報告することで、必要な融資の金額をこちらから提示する
(単にいくら足りない、ではなく、所要運転資金がこれだけ増えるのだから、と伝える)
これを最低3ヶ月、長ければ3年近く続けた結果、金融機関が
「この融資はプロパーであっても考えられる」
と考えてくれるに至ったのです。
融資を適切に受けられる鍵は、日常の報告の積み上げにあります。
常にいくらの資金が将来必要になるのか、今ある棚卸資産が適切であること、それを伝え続けることが金融機関を動かすとご理解下さい。
これからは、真面目すぎる会社の方が、融資を得られます。
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