『 金融機関の選択 』 -2013年08月14日号
資本市場等の外部から直接資金を調達してくる力が弱い中小企業にとって金融機関からの融資は経営の舵取りを行う上で、非常に重要になってきます。
今号は銀行、信用金庫、信用組合の特徴を元に新規取引の金融機関をどうするか? 既存取引の中でどの金融機関との付合いを深めて行くべきか? の参考になればと思います。
まず銀行は銀行法を根拠法としており、国民大衆のために金融の円滑を図る事を目的として設立されております。組織形態としては株式会社であり営利法人となります。また会員資格や、預金・貸出金の業務範囲も特に制限なしというのが特徴です。
次に信用金庫は信用金庫法を根拠法としており、国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資する事を目的として、設立されております。組織形態としては会員の出資による協同組織の非営利法人となります。
会員資格は
(営業地区内において)
- 住所または居所を有する者
- 事業所を有する者
- 勤労に従事する者
- 事業所を有する者の役員
である必要があり、
<事業者の場合>
従業員300人以下または資本金9億円以下の事業者
である必要があります。
業務範囲として預金の制限はないのですが、貸出金において原則として会員を対象とするが、制限つきで会員外貸出もできる卒業生金融制度というものがあります。
最後に信用組合は中小企業等協同組合法、協同組合による金融事業に関する法律(協金法)を根拠法としており、組合員の相互扶助を目的とし、組合員の経済的地位の向上を図る事を目的として、設立されております。組織形態としては組合員の出資による協同組織の非営利法人となります。
会員資格は
(営業地区内において)
- 住所または居所を有する者
- 事業を行う小規模の事業者
- 勤労に従事する者
- 事業を行う小規模の事業者の役員
である必要があり、
<事業者の場合>
従業員300人以下または資本金3億円以下の事業者(卸売業は100人または1億円、小売業は50人または5千万円、サービス業は100人
または5千万円)
である必要があります。
業務範囲として預金は原則として組合員を対象とするが、総預金額の20%まで員外預金が認められる。
貸出金は原則として組合員を対象とするが、制限つきで組合員でないものに貸出ができる(信用金庫の様な卒業生金融制度はなし)
上記の内容で分かるようにそもそもの根拠法が全て異なっており目的が異なれば、営利・非営利の違いもあり、全てにおいて一緒では無い為、融資審査結果に差が出るのはある意味、当然です。
銀行が晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げるのは営利企業であるという一面だけ捉えれば当然の行為ですし、信用金庫の目的が貯蓄の増強に資するものであれば預貸率が低いのも、ある意味当然でしょうし、信用組合がよく審査が甘いという事を聞くのも、組合員の相互扶助、経済的地位の向上の為に設立されたのであれば、甘くならざるを得ないのかなと思います。
肝心なのは前述したような各金融機関のバックボーンを知った上で、自社にあったメイン金融機関や新規取引金融機関を探す事です。
海外取引が盛んで年商規模が5億以上ある所は、銀行との取引も必要でしょうが、年商規模が5億以下で国内取引100%の企業は、融資において柔軟性のある信用金庫や信用組合で十分対応が可能です。
将来的に拡大志向のある企業は拡大に合わせて銀行の割合を増やしていき、雨が降った時でも自分の傘で雨を十分凌ぎ切れる様な財務体質をつくってください。その上でメイン金融機関を銀行へシフトするのであれば取引関係も良好に進むでしょう。
そして金融機関担当者が決算書と担保・保証人一辺倒の融資審査ではなく、『半沢直樹』の様に経営者の資質や事業の将来性を見定める能力を養って頂けることを願ってやみません。その目利きの能力が結果として中小企業を強く元気にする為の一助になるのです。
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