再生の入り口 -2012年05月30日号
最近、来年の3月に失効する。中小企業金融円滑化法の内容に触れ『出口戦略』という言葉が良く使われるようになりました。
出口戦略=ゴールを描くというのは確かに大事な事です。出口があれば当然ながら、入口もあります。今回は再生における入口の入り方についてお話しできればと思います。
入口に入らなければいけない中小企業の特徴としては
- 経常赤字が2期以上連続で続いている
- バランスシートを実態に査定し直すと債務超過(=総資産<総負債)
- 手元流動性預金が月商の1ヶ月未満
- 借入金月商倍率が6ヶ月以上
上記の中で1つでも当てはまるのであれば再建計画を考える必要が出てきます。
入口としてはその再建計画を利害関係者に説明を行い、支援を頂く必要があります。中小企業の再生における最大の利害関係者は金融機関である事がほとんどです。
私はこの入口に入る前の準備段階の重要性を、顧問先経営者の方へ伝えています。それは即ち手元資金の最大化です。
担保提供していない定期預金であれば解約します。毎月の定期積金であればストップして解約します。滞納している売掛があれば差押をしてでも回収します。有価証券・遊休不動産も同様です。換価出来る資産は全て換金します。追加融資の可能性があれば追求します。
その上で金融機関を含む利害関係者の方には現状生み出せる資金の中での支援体制をお願いします。
何故、ここまで行う必要があるのか? 金融機関との関係がおかしくなるのではないか? 経営者の方から良くいわれる質問です。
私は「必要性はあります。金融機関との関係もおかしくなる可能性はゼロではありません」と答えます。
何故、ここまでやるのかというと、入口に入る段階で利害関係者との交渉は非常に不安定なものであり、現時点でこそ中小企業金融円滑化法に守られていますが、金融機関はいつ手のひらを返すか分かりません。担当者、支店長が変われば方針がころっと変わるのは良くある事です。自社の資産を追加担保入れるよう要請が来る場合もあります。
他の利害関係者においても同様です。
こうなると使えるはずの資金が活用できなくなってしまいます。
そこまでして資金を確保するのは再生を行うにあたり、再生資金の確保は絶対に必要だからです。現状、日本の再生支援制度では中小企業は自社で資金確保せざるを得ません。資金繰りを円滑にまわす再生資金の確保が出来れば、経営者も前に向かって歩みだす事が出来ます。
売上を増やす為に新たな投資を行うのも可能になります。
再生資金がない中での、再生は経営者自身が資金繰り調整に奔走しながら事業を立て直さなければならず、とても経営に集中できるものではありません。よって再生の確率は格段に下がります。最終的に会社を守り存続させる事が出来るのは資金があるかないかです。
厳しい言い方ですがそれしかありません。
短期的には金融機関や他利害関係者との関係が多少悪化しようとも長期的に利益を出し、キャッシュフローを潤沢に生み出せる状態を早くつくる事が出来るのであれば、利害関係者との関係も良好になっていきます。その為には資金確保の必要性を経営改善計画書の中に盛り込み利害関係者への説明はしなければなりません。
短期的な損得勘定やこれまでの付き合いで物事をどの様にすべきか判断するのでは無く、長期的視野に立って会社を再生させるには今何をするのが正しいのか?考えて実行してください。
再生の入口に入る前の準備段階で何を行うかで、会社の再生確率は変わってきます。まずは自社の手元資金確保を最優先してください。
これは私が再生現場での経験より得た一つの答えです。
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