『 優越的地位の濫用と情実融資について 』 -2021年11月10日号

今回は、新型コロナウイルス感染症の影響により金融機関様のご対応が少し変化した様に思えた部分についてお話しさせていただきます。
政府の手厚い支援によりコロナ融資にて資金調達をされた企業も少なくはないかと思います。あくまでも私の個人的な意見です。

私が金融機関に勤務していたころは、新規融資先の獲得、保証協会付融資の獲得、融資量の増加等大変厳しいノルマがありました。貸出以外のノルマとしては、クレジットカード、投資信託、変額保険等多くのノルマがありました。
特に金融機関の決算に関連する3月、9月は借りる必要もないのに金融機関様から融資、投資信託等の預かり資産のお願いをされた経営者の方も多いかと思います。

しかしながら新型コロナウイルス感染症の影響を受け、コロナ融資が出てからはどうですか? 

コロナ融資の勧誘は活発になったものの、金融機関様の決算・中間決算時の当座貸越等の極度取引を利用したお願い融資は減ったのではないでしょうか?
資金が潤沢にありますので、言葉巧みに預かり資産の勧誘は継続的に行われているのではないかと私は思っています。ストレートに物事を言わせていただくなら、『金融機関にうまく利用されていませんか?』と私は言いたいです。

本来、金融機関様からのお願い事については、優越的地位の濫用にあたるのではないかと私は思います。あまり聞きなれない言葉かと思いますが、2021年7月に当時西村経済相が緊急事態宣言下で酒類提供を続ける飲食店について、「要請に応じない店の情報を金融機関に共有する」「金融機関からも順守の働き掛けをしてほしい」などと発言されこの発言の直後から、「優越的地位の濫用ではないか」との指摘が相次いだ事は記憶に新しいかと思います。

ではこの優越的地位の濫用とはどの様なものなのか? 少しお話しさせていただきます。

「優越的地位の濫用」とは、『私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(通称:独占禁止法)』第2条第9項第5号で定められた「不公正な取引方法」の一種です。
不公正な取引方法は、同法第19条で「用いてはならない」と明記されているため、すなわち法律違反行為であり、摘発されれば、行政処分や損害賠償等の民事責任を負う可能性があります。
優越的地位の濫用を構成する要素は以下の3点であると言われております。

  • 取引関係にある者のうち一方が優越的地位にある
  • 優越的地位にある者が地位を利用して相手方に不利益を与える行為をする
  • ②の行為が正常な商慣習に照らして不当なものである

    ※各業界において通常行われる範囲での経済行為

ちなみに優越的地位の「優越」の基準は、絶対的ではなく相対的と解釈されています。
あくまで当事者間での取引依存度や市場での地位の優劣などを考慮するのが通例です。
優越的地位の濫用は、「取引する商品やサービスの相場は常識の範囲内に収まっているが、自分の立場を利用して相手に不利益を与える行為」とまとめられています。では金融機関様からのお願い事についてはどうなのでしょうか?

金融機関様はお金を貸す、企業様はお金を借りる立場とした場合、実際にお金を借りる側からすれば、金融機関様からお願いをされれば『断れない』というのが本音ではないですか? 特に業績が悪ければ悪いほどその気持ちは大きいものだと思います。
これこそ上記に該当するのではないでしょうか?
お願いされても受け入れる必要はないと私は思います。お断りした事で融資に対する対応が変わると私はおもいません。思いたくありません。もしそうでなければその金融機関様との取引をやめればいいからです。
逆にお付き合いをやったからその後の融資審査に有利になるのでは? と思ってみえる経営者の方も中にはみえるかもわかりませんが、有利になることは全くありません。
あくまでその企業の財務内容と収益力等で審査をされますので、融資審査に「忖度」はないのです。仮に「忖度」で融資をやると、「情実融資(禁止事項)」と見なされます。

『情実融資』?の方の為にもう少しご説明させていただきます。

情実融資とは言葉のごとく、友人関係など、金融機関の役職員の個人的な関係に基づいてなされる融資のことを言います。企業の財務内容と収益力等で審査を行い融資をするのではなく、情で融資をする事ではないでしょうか? この情とは金品を含めた要求、もしく
は提供ではないでしょうか?
禁止事項ですので当然あってはいけない事だと思いますが、実際はどうなのでしょうか?
実際に支店長に手数料を支払い融資を受けたという噂話しを聞いたこともあります。
微妙な実例で説明をするならば、支店長・担当者に接待を行う。
本音は言いませんが、接待を継続的に受けたいからいい条件で融資を実行するという事も実際に存在しているのではないでしょうか? 
金融マンが自覚していないだけで、知らないうちに実際におこなわれているのが事実だと思います。今回お話しした内容は禁止されている事項であります。

つまり、「今後も融資を出してもらえるために、お付き合いでしょうがないか・・・」と思っている経営者の方は無理にお付き合いをする必要はありません。
万が一、金融機関の担当者から「この申し出受けてくれなければ融資は出ません」と言われたら、それは「優越的地位の濫用」に該当し、そのような状況に遭遇した場合は、金融庁にご連絡すればいいのです。

そして接待等を行えば資金調達ができる! いい条件で資金調達ができる! と思っている経営者の方はそんな事はありませんので、よりよい条件で資金調達を行う等の金融調整をご希望される方は弊社へご相談をしてください。

つづきまして、金融機関の対応で実際に私の顧問先にて発生した(している)生の情報をお伝えさせていただきます。(ある経営者の方がメイン銀行の担当者から言われた一言です。)

業績が低迷している経営者の方は、業績を回復させるために死に物狂いで運営をしていますが金融機関の担当者の方から『笑顔で』『新しい会社をつくればいじゃないですか』と言われたそうです。今の会社を潰せというように思え、その担当者の顔が今でも忘れられないそうです。
金融機関の担当者は取引先がつぶれようが、関心がないのでしょうか? 取引先が潰れても給料はもらえるし、困る事はないのでしょうね。・・・だからこんな態度にでたのかと?・・・

本当に、金融機関の担当者の方は担当先の事をどう考えているのか?
私の口癖ですが、

『どこの金融機関様とお付き合いをするかによって、あなたの会社大きく左右されますよ!』
『生き残るのも! つぶれるのも!』・・・

だからこそ、私は皆様のお役に立ちたいと思います。

以 上 

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