『 短期継続融資 』 -2022年08月03日号

先日私は社内研修に参加し『短期継続融資』について再度学んできました。

実際に金融機関様は、この『短期継続融資』をどこまで理解し実際に活用しているのかはわかりませんが、企業様にとって知っているにこした事はないと思いましたのでお話しさせていただきます。

但し全ての企業様が該当するものではありません。財務内容に問題がなく返済も正常に履行されている企業様が主な対象者になる事をご理解お願い致します。

  1. 短期継続融資とは
    期日一括返済を条件とした契約期間が1年以内の短期融資の事で期日到来時に手形貸付等の書替で融資をつなぎ、返済期限を延長するというものです。
    金融庁では、正常な運転資金の範囲内であれば、手形貸付の書換の方法の短期継続融資で対応することは何ら問題がないとされており、『タンコロ』という名称(短期書換で転がす)で呼ばれております。
    この融資は、無担保無保証で借入金は返済せず、利息のみを支払えばよいとされております。
    しかしながら無担保無保証である一方で、金融機関様が定期的に事業内容を確認するものです。
  2. 正常な運転資金とは
    企業が商取引をする中で、入金と支払の期間のずれから生じた資金不足の事を言います。
    例えば、仕入の買掛金の支払いサイトが30日、売掛金の入金サイトが60日であったとします。
    買掛金の支払は、売掛金の入金前に先に支払いをしなければなりませんので、在庫を持っている様な業態であれば、在庫の滞留金額も加味したものが正常な運転資金となります。
  3. 正常な運転資金の求め方について
    正常な運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務
  4. 正常な運転資金の問題点について
    上記2より、『仕入の買掛金の支払いサイトが30日、売掛金の入金サイトが60日』の会社は、売上が増加すればするほど、この差額の金額が増加ししますので、売上が上がるほど、資金不足になり、売上を受注したくとも、仕入金額の調達ができないと、受注ができない、という問題が発生するのです。
  5. 問題解決策について
    正常な運転資金には資金調達が必要。しかしこれを定額返済が必要な長期借入金で調達すると、商取引で発生した利益の中から定額返済していかなければいけないので、一定期間が経過するとまた資金不足が生じ、売上が上がれば、また追加で資金不足が生じる事になります。
    だからこそ正常な運転資金は、返済が必要な長期借入金でなく、『短期継続融資』で資金調達することが経営安定した資金調達方法となるのです。
  6. でも実際には
    経常運転資金のための借入が証書貸付に移行し、約定弁済が求められ、企業は資金繰りに苦しむことになりました。また、短期融資で「貸しはがし」された企業は、長期融資を志向するようになりました。
    こうして資金使途に関わらず証書貸付による借入が一般化していったのです。
  7. そこで金融庁は
    平成27年金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕に新たな事例(事例20)を追加し、以下の趣旨を明確化。
     1.正常運転資金に対して、「短期継続融資」で対応することは何ら問題ない。
     2.「短期継続融資」は、無担保、無保証の短期融資で債務者の資金ニーズに応需し、書替え時には、債務者の業況や実態を適切に把握してその継続の是非を判断するため、金融機関が目利き力を発揮するための融資の一手法となり得る。
     3.正常運転資金は一般的に、卸・小売業、製造業の場合、「売上債権+棚卸資産-仕入債務」とされているが、業種や事業によって様々であり、また、ある一時点のバランスシートの状況だけでなく、期中に発生した資金需要等のフロー面や事業の状況を考慮することも重要である。
  8. その結果
    金融庁がこうした方針に転換したことで、短期継続融資(短コロ)も一般化する様になっているはず。
  9. しかし・・・
    金融機関から『短期継続資金』の提案があればよいのですが、もし提案がなければ、是非、企業様側から『この金額は正常な運転資金なので、短期継続融資の手形貸し付けでお願いします。』と言ってみてください。

   
続きまして、私の現場で実際におきた案件についてお話させていただきます。

実際に業績が安定している企業様のメイン銀行様に上記の『短期継続融資』の取上げの可否を相談しました。
何と結果は・・・
  ①経常運転資金に満たない金額での取上げを提示(金額の根拠がわからない)
  ②短期継続資金よりも私募債での提案。
担当者の方は理解されていない→これが実態です!
 
今後、6年後を目指して中小企業向け金融政策の常識が変わると言われており、6年後には劇的に変化していると思われます。
しかしながら、先方がその変化についていけなければ、必ずその影響は企業様に降りかかると思います。
6年後に動くのではなく、今から動いてください。

『本当にどんな些細な事でも相談して欲しいと・・・まずは私に一本の連絡をするという勇気を出して欲しいと』
 ・・・私は皆様のお役に立ちたいと思います。

以上

 

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