『 来年2024年に向けた 国の2024年3月までの資金繰り支援情報 』 -2023年12月27日号

経済産業省・中小企業庁より、2023年12月から年度末の2024年03月までの資金繰り支援メニューが取りまとめられ、リーフレット形式(2頁もの)で公表されました。簡潔にまとめられており、わかりやすいものとなっておりますので、次のリンク先をご参照いただき、ご面倒お掛け致しますが、プリントアウトしていただいた上で、メール文をお読みいただきますとわかりやすいかと思います。

支援メニューの中には、以前にご案内させていただいたものもあり、重複するところもあると思いますが、制度等の内容が一部運用見直しとなったものもありますので、改めまして説明させていただこうと思います。

国としましては、来年の夏頃において、中小企業事業者の大規模な資金繰り懸念を想定しています。その影響は、当然、貴社単独の話だけではなく、貴社の取引先にも及ぶかもしれません。そのために、でき得る限り、お手許に資金確保しておくことが肝要となります。

国側は、各種支援を知ってもらうことで、事業者に前以て、資金繰り予定に取り組んでいただくように案内を出し促しています。そうした経緯も含めて、以下の文面に目を通していただきたく、本日お忙しければ、年末年始のお時間取れるタイミングで、じっくりと、ご一読いただければ幸いです。

当該リーフレットの構成としまして、まず、大きく区分しまして、(1)政府系と(2)民間の金融機関(信用保証協会)の支援に分けられます。

(1)政府系金融機関

 政府系金融機関は日本政策金融公庫です。

 支援メニューとしましては
  ① 低利・無担保融資、
  ② 資本性劣後ローン、
  ③ セーフティネット貸付
 の3つあります。

 ① 低利・無担保融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)

  対象者の要件としましては、前提として、コロナの影響があった方で、
  (イ)売上が5%以上減少
  または
  (ロ)債務負担が重い方
  になります。

 (イ)の数値要件としましては、

  • 最近1ヵ月間の売上高、
    または、
  • 最近1ヵ月を含む過去6ヵ月の平均売上高が、
    前5年のいずれかの年の同期と比較して、5%以上減少していること

  が必要となります。
  最近、得意先に対して値上げ要請等もされて、売上高としましては増収傾向になるところもあるかと思いますが、比較時期として5年前まで遡れますので、過年度において数値要件に当てはまる時期があるのかどうかを確認してみてください。

 (ロ)の要件としましては、

  • 債務負担が重くなっていることが必要となっておりますが、数値要件としましては明示されておらず、上記のWebサイト上でも、「一定の要件を満たす必要があり」、「要件の詳細は、お近くの支店にお問い合わせください」とされております。問い合わせしないと判断できないため、支店担当者の判断に強く影響され、予測しづらい要件かと思います。

 特徴としましては、

  • 融資限度額は、中小企業事業で6億円まで、国民生活事業で8千万円まで。
  • 利率に関しましては、融資後3年目までは基準利率から0.5%をマイナスしてくれます。ただし、この利率を0.5%下げてくれる融資上限は、中小企業事業で4億円まで、国民生活事業で6千万円まで。
  • 返済期間が20年以内で、うち据置期間は5年以内と長期間となっており、これは相当長い期間が確保されている印象です。
 ② 資本性劣後ローン(新型コロナ対策資本性劣後ローン)

 こちらの資本性劣後ローンに関しましては、これまでも何度かご案内させているものです。一部、運用の見直しもありますので、今回改めて、ご案内させていただきます。

  対象者の要件としましては、前提として、コロナの影響あり、
  (イ)専用の事業計画書を策定し、
  かつ
  (ロ)民間の金融機関による支援を受けられる等の支援体制が構築された方
  になります。

 (イ)の要件としましては、
  ・審査時に、原則として、新型コロナ対策資本性劣後ローン専用の事業計画書を提出する必要があります。
  計画に関しましては専用のフォーマットにて、比較的長い期間の事業計画を策定する必要があり、きっちりと数値に落とし込む必要があります。

 (ロ)の要件としましては、

  • 原則として、ご融資後、概ね1年以内に、民間金融機関等からの出資または融資による資金調達が必要となります。民間メイン行の協調同意が必要となります。

   要は、民間メイン行がきちんと支援していく意思があるのか、を日本政策金融公庫が確認するといったことになります。間接的にではなく、日本政策金融公庫の担当者から民間メイン行の担当者へ、直接、電話等で確認をします。

   例外的に、民間メイン行等からの協調支援を希望しない場合においては、弊社のような認定経営革新等支援機関の支援を受けることで、事業計画書を策定する方は対象となる、ということにはなっていますが、やはり例外ですので実務上では難しいように思います。民間メイン行の協調同意を得ることが望ましいです。

 特徴としましては、

  • コロナの影響を受けていることが前提にはなりますが、売上減少等の数値要件がないことになります。そのため、増収増益であっても申し込み可能です。
  • 日本政策金融公庫が劣後になってくれるので、結果、民間金融機関が優先となり、事業者と民間メイン行との関係強化に繋がる。
    日本政策金融公庫は事業者だけでなく民間メイン行等も支える立場となってくれる、とも言えます。
  • 民間金融機関からの融資の呼び水としての役割を担ってくれる。
    まず、日本公庫で融資実行。それを受けて民間金融公庫も実行、という流れになります。
  • みなし自己資本として取り扱ってくれる。
    純資産が厚く見せることができます。
  • 別枠である。
  • プロパーであり、信用保証料が不要である。
  • 無担保・無保証人である。
  • 当初3年の利率が低い。
    赤字だけでなく、少額の黒字の場合も低い利率にて運用される予定です。
  • 期限一括返済で、毎月の元本返済がない。
  • 融資限度額は、中小企業事業で15億円まで、国民生活事業で7千2百万円まで。
  • 返済期間は、5年1ヶ月、7年、10年、15年、20年の5種類から選択。

 といったことが挙げられます。

 このように、いろいろなメリットがあります。活用のしがいのある制度です。

 ③ セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)

  対象者の要件としましては、前提として、ウクライナ情勢や原油価格高騰などのマイナスの影響を受けた方となります。
  それを踏まえた上で、次の細かな諸要件がございます。
  (項目が多く、正直、見にくいです。各項目を内容によって区分してコメントを付してみましたので、お時間取れるときに、ご覧いただければと思います)

  (イ)最近の決算期における売上高が、前期または前々期に比し、5%以上減少。
  (ロ)最近3ヵ月の売上高が、前年同期または前々年同期に比し、5%以上減少、かつ、今後も売上減少が見込まれる。
  →売上高の減少に関する要件になります。

  (ハ)最近の決算期における純利益額または売上高経常利益率が、前期または前々期に比し、悪化している。
  →利益の額や率に関する要件になります。

  (ニ)最近の取引条件が、回収条件の長期化または支払条件の短縮化等により、0.1ヵ月以上悪化している。
  →得意先や仕入先等との取引条件の悪化が要件となります。

  (ホ)社会的な要因による一時的な業況悪化により、資金繰りに著しい支障を来している、または、来すおそれがある。
  →曖昧な内容ですが、「最近における売上高総利益率または売上高営業利益率が、前期に比し、5%以上減少していると、基準利率から0.4%をマイナスしてくれる」という基準が設けられていますので、利益率の悪化が指標になるものと思われます。

  (ヘ)最近の決算期において、赤字幅が縮小したものの、税引前損益または経常損益で損失を生じている。
  (ト)前期の決算期において、税引前損益または経常損益で損失を生じており、最近の決算期において利益が増加したものの、利益準備金および任意積立金等の合計額を上回る繰越欠損金を有している。
  (チ)前期の決算期において、税引前損益または経常損益で損失を生じており、最近の決算期において利益が増加したものの、債務償還年数が15年以上である。
  →赤字等が要件になります。

 特徴としましては、ウクライナ情勢や原油価格高騰などのマイナスの影響があることが前提となりますが、

  • 赤字や債務超過でも貸してくれる可能性がある。
  • 返済期間は運転資金で8年以内、設備資金で15年以内。双方とも、うち据置期間は3年以内。

 といったところです。
 上述の①や②と比べますと、返済期間は短く、やや厳しい内容となっている印象です。

(2)民間金融機関(信用保証協会)

 民間金融機関と言っても、信用保証協会による制度です。

 支援メニューとしましては
  ① コロナ借換保証制度
 になります。

 ① コロナ借換保証

  対象者の要件としましては、
  (イ)売上または利益率が5%以上減少、等
  かつ
  (ロ)経営行動計画書の作成が必要
  となります。

 (イ)の要件としましては、

  • セーフティネット4号の認定(売上高が20%以上減少していること等)。
  • セーフティネット5号の認定(指定業種であり、売上高が5%以上減少していること等)。

  →コロナの影響を受けた方は、比較時期を、前年同期だけではなく、コロナの影響を受ける前でも可、となっています。

  • 売上高が5%以上減少していること(最近1ヶ月間の実績と前年同月の比較)。
  • 売上高総利益率/営業利益率が5%以上減少していること(最近1ヶ月間の実績と前年同月の比較に加え、直近2年分の決算書比較でも可)。

 (ロ)の要件としましては、

  • 金融機関とともに、決まったフォーマットの書式の経営行動計画書を作成する。
  • 経営行動計画書の内容に基づいて、金融機関の継続的な伴走支援を受けていく。

  となっています。

 特徴としましては、

  • 保証限度額1億円。
  • 保証期間10年以内(うち据置期間5年以内)。
  • 100%保証の融資は、100%保証での借換が可能。
  • 信用保証料が補助され、補助前は0.85%等であったものが0.2%等になる。

 といったことが挙げられます。

以上がリーフレットの概要をかみ砕いたものになります。

今後は、あらゆる事業者にとって、自社だけではなく、取引先の財務状況も踏まえた資金繰りが必要となってきます。

貴社におかれましても、貴社の今後の事業見通しと、得意先・仕入先の状況も検討・精査しながら、どの程度の資金を手許で確保しておく必要があるのか、について年末年始で熟考していただきますと有難いです。

それでは、この度の情報が、ご参考になれば幸いです。

本年も、ありがとうございました。
来年も、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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