『 新しい評価手法「ローカルベンチマーク」 』 -2016年06月29日号

今年3月4日、第4回「未来投資に向けた官民対話」において安倍総理は地域企業の経営診断の指標として「ローカルベンチマーク」を活用した制度設計を指示しました。

この目的は、
「地域の金融機関や支援機関が企業と対話を深め、担保や個人保証に頼らず、生産性向上に努める企業に対し、成長資金を供給するように促す」
(安倍総理発言抜粋)ことにあります。

また、企業経営者等と金融機関、支援機関の対話を深める入り口として使われることとされており、金融機関等が独自の視点でより深い対話・理解をすることを認めつつも、入り口=大前提としてローカルベンチマークが利用されることが明示されています。

この、ローカルベンチマークという新たな評価手法においては、これまでの金融機関の中小企業評価とは異なる切り口での財務指標が採用されています。

◆キーワードは「稼ぐ力」「生産性」

既に公開されている資料を調査・確認する限り、提示されている財務指標は今のところ6つあります。

  1. 売上増加率 ((売上高/前年度売上高)-1)%
  2. 営業利益率 (営業利益/売上高)%
  3. 労働生産性 (営業利益/従業員数)%
  4. EBITDA有利子負債倍率
    ((借入金-現預金)/(営業利益+減価償却費))年
  5. 営業運転資本回転期間
    ((売上債権+棚卸資産-買入債務)/月商)月
  6. 自己資本比率(純資産/総資産)%

これら6つの指標を見て、どう思われますか?

「当期利益」が1箇所も使われていないですよね。
会社が最終的に残す利益ではなく、本業で稼いだ利益に焦点が当たっています。

一過性の特別損益や、本業とは関係のない営業外損益の前、営業利益をもって評価することが、これまでと大きく異なる点の一つです。
実務上では、最終的な当期利益は変わらないからといって特別損益を活用してこなかった中小企業は数多くありますが、そればかりでは、今後はわざわざ過小評価されることになりかねないことにご注意下さい。

また、労働生産性については、一般的な財務分析においては元々重要指標でしたが、融資の可否判断においては殆ど採用されることがなかったものです。

今回スポットライトがあたることになりますが、このポイントは、企業にとって最大の資産であり、コストでもある「ヒト」が、真に有効な資産として活用されているか、活用できている企業であるかどうかを問うものでしょう。

どの金融機関でも共通の融資の五原則というものがあり、安全性、収益性、流動性、公共性、成長性、の5つとされています。

ローカルベンチマークの採用により、収益性については「本業の収益」という側面が強調され、また新たに「生産性」という6つ目の原則が追加される、そのような理解でよいでしょう。

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