『 返済ペースと手許現預金のバランス 』 -2018年09月26日号

◆リスケジュール中の企業への返済金額算出

リスケジュール中の企業は新規での借入が大幅に抑制される一方、返済ペースについては金融機関と会社の交渉によって、全額~一部を猶予することができます。

金融機関側の基本は、直近決算における最終利益+減価償却(簡易キャッシュフロー)を年間返済可能額として、12で割ったものを月額と考えます。

この考え方は万全なものではありませんが、基本としては間違っていません。
問題は、「個別の要因を考慮しないで、盲目的にこの水準をベースにするのが危うい」ことにあります。

◆手許現預金の最低限度の水準

特にリスケジュール中の企業の場合は、新規での借入ができない以上手許の資金で運転資金も、設備資金も賄わなくてはなりません。
そんな中で、簡易キャッシュフローの全額、もしくは大半を返済に充ててしまうと

  • 収益を出しても全て返済にもっていかれる
  • 現預金が少ないため、資金繰りがいつまでも楽にならない
  • 投資も当然できない

ため、経営は縮こまったまま・再生へ向かうこともおぼつかない状況を変えることができないのです。

きちんと交渉すれば、リスケジュール中であっても「月商1か月分程度の現預金を保有する」程度は認められるものです。

会社の安全性と言う観点では、本来月商2か月~3ヶ月分が欲しいのが正直なところですが、月商1か月分の現預金があれば

  • その月の入金が末に集中している、と仮定しても「月商1か月分以上の支払を1か月で行われることは経営上、基本的にない(受注ロットの大きい場合はともかく)」ため、その月の支払は全て行うことができる

    ⇒危機的状況になってしまっても、1か月は対応する猶予がある
  • 1か月分の手許現預金があれば、仮にその月の支払を全て先に行っても、大きな収支マイナスでもない限りは現預金が残る

    ⇒入金が入ったら、そこから支払う、「自転車操業」をしなくてよいことが見込まれるため、最低限の安定をしていると言えるのです。
◆返済ペースの設定は、借り手企業側から持ちかける

「リスケをしているため、資金繰りがいつまでも楽にならない」という相談はなかなか減りません。

この場合、多くは上記の考えで返済ペースが設定されていません。

現預金が月商1か月分程度になるまでは、元本返済を大きく減額(元本据置=利息のみ払いを含む)してしまってよいのです。
「現預金が月商1か月分くらいは欲しいので、それまでは返済を少額にしたい」と交渉時に主張するのは、何ら問題ありません。

融資担当者の方から申し入れしてくれることは殆どありません。
彼らは、基本ルールに忠実に簡易キャッシュフローの返済を求めるものです。銀行交渉は、企業経営者が自ら申し入れすることで、はじめて上手く機能します。

御社の現預金は月商と比較して、どれほどありますか?
返済金額とのバランスは適正でしょうか?

一度見直しして、安心感ある資金繰りを「リスケジュール中でも」していただければ幸いです。

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