「儲けを意識する」

■利益と儲けは違うのか?
 
あなたは利益と儲けの違いを認識されていますか?

儲けとは何ですかとお聞きするとある程度の知識のある方なら、試算表や損益計算書の売上-費用で算出される利益だと答えられる方が多いですが、儲けの考え方では利益は儲けを算出する為の一要素として使われるだけです。

では、儲けはどの様に算出するのでしょうか?

計算式であらわすと

儲け=回収-投資

となり、単純にいってしまえばいくら使っていくら回収できたか?
という事になり非常にシンプルなものです。

個人の株取引だとイメージしやすいのでしょうか?

例:100万の株を購入して、150万で売却した。よって儲けは50万だった。(計算を簡易にするため手数料等は省いております)

これを先程の計算式に当てはめると

50万(儲け)=150万(回収)-100万(投資)となります。

しかしながら経営においては「利害関係者(ステークホルダー)」の存在が儲けの算出を難しくしている面がありますが、基本は変わりません。

 
■損益計画のみの経営計画の落とし穴

あなたの会社の経営計画は損益計画のみですか?

利益はほぼ達成できたのにお金が増えていない、逆に減っている事がある。こんな疑問を感じた事は無いでしょうか?

また、金融円滑化法案が施行されて金融機関へ返済条件の変更を申し込まれる際、経営改善計画書を提出される事が多くなっていますが、支援を依頼する側もされる側も損益計画のみで支援を決定するというのを相談を受けているとたまに見かける事があります。

支援の基準を売上・利益に重点を置いているから経営者の意識が売上・利益重視に傾いてしまい、儲ける事への意識が希薄になっていると感じています。

売上利益重視の一例を出しますと
 
前期で
年間固定費  5,000万(償却無しと仮定)、
変動比率       60%
売上高    12,500万(損益分岐点ギリギリ)、
売上債権回転日数  (30日)
在庫回転日数     (30日)
仕入債務回転日数  (40日)
という企業がありました。

計算式:固定費÷(1-変更比率)=損益分岐点売上高

この企業が今期利益率5%を目標として固定費・変動比率は変わらず売上のみで達成しようとした場合、14,285万の売上が必要となります。

計算式:目標固定費÷(1-(目標変動費率+目標利益率))=目標売上高

仮にこの計画を達成できた場合、売上・利益的には

売上  14,285万
変動費  8,571万
固定費  5,000万
利益     714万(5%)

となり目標を達成できて、良い結果が出たと言えますが、

・営業マンが売上を重視するあまり取引先のいいなりになり、平均回収サイトが10日伸びてしまった(売上債権回転日数 30日 1,027万 → 40日 1,565万)
・売上を増やす為に取扱品目を大量に増やした事で在庫が膨れ上がり、入庫から売れるまでの平均日数が10日伸びてしまった(在庫回転日数 30日 616万 → 40日 939万)
・取扱品目を増やす為に仕入取引業者を拡大させた結果、平均支払サイトが5日縮まってしまった(仕入債務回転日数 40日 822万 →35日 822万)

売上・利益を重視する上で上記3点が運営結果として出た場合発生主義の原則による損益は全く影響はでませんが、儲けの視点から診た時に

売上債権投資増 538万
在庫投資増    323万
仕入債務投資増   0万
合計投資増    861万

となり、利益を簡易回収額と見た場合、

714万(回収)-861万(投資)=△147万(儲け)となり、この企業は事業を拡大し利益は出ているのにお金が減ってしまう(儲かっていない)状態に陥っています。

よって経営計画はBS・PLに区切るのでではなく投資・回収の視点から、損益計画・資金計画・要員計画・行動計画を作成する事をお勧めします。

■儲けてこそ事業は続ける事が出来る

勘定あって銭足らずの一例をご紹介しましたが、あなたの会社は如何でしょうか?

売上・利益が必要ないなどと言っているのではありません。

利益は成果のパロメーターであり、社会のための組織である企業には必要なものです。

その全てにおいて儲けの視点を基に経営活動を取り組んで頂きたいのです。

今回ご紹介した3つの回転日数の指標は如何に効率良く投資したものを回収しているか判断できる指標のひとつです。

企業はボランティアで事業活動を行っているのではありません。

儲けなければ事業を存続させ成長させる事は出来ないのです。

あなたの会社においても決算書・月次試算表を時系列に並べてみて過去の実態を調べてみてください。

儲かるヒントが隠れているかもしれません。


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