『 承継と親子関係と債務超過 』 -2019年09月18日号
◆親御さまからみて
先代様、もしくはこれから承継を考える現職の方にとっては、
- 息子に継がせたいが、これまで培ってきた伝統や歴史の大事さをなかなか理解してくれない
- 継がせたい相手はいるが、借金があることを気にされてしまい承継を拒否されてしまう
- 代表取締役については既に渡しているものの、どうもしっかりしていないように感じられる
◆ご子息さま(もしくは、後継者さま)からみて
- 債務超過の会社の連帯保証人になってまで、継ぐ必要があるのかどうか疑問に思ってしまう
- 数十年先までを考えた時に、存在することができるように思われない
- 代表取締役にはなったものの、いちいち介入されるために自分の意思で何かをすることができない
といった具合に、どちらからみても悩みは生まれます。
この問題に財務、という見地からアプローチするならば
- 「現預金」⇒資金繰りの余裕
- 「借入金」⇒返済しなくてはならない負債の大きさ
- 「純資産」⇒債務超過であることの負担
の三点で大まかにはカバーされます。
現預金や借入は、誰でも意識しやすいものですから、今回は「純資産」に焦点をあててみましょう。
◆債務超過と承継を考える
債務超過はよくない、解消しなくてはいけないことは、よく知られたことなのに、どのように良くないのかというのは今ひとつ知られていないイメージがあります。
改めて認識しておくべきです。
債務超過というのは、
「純資産がマイナスであること」
⇒資産を全て現金化しても、負債を全て支払うことができないこと
とされていますが、この状態は
債権者にとっては、貸したお金が回収できない可能性がある
⇒債権者としての権利を行使してでも、回収したいと思う
⇒債権者としての権利は、オーナー社長でも止められない
場合がある(差押や競売等)
ということですから、社長にとっては債権者に会社の行く末が決められてしまうことを許していると言い換えることができます。
つまり、「社長が実権を、債権者に奪われている」のです。
厳しい申し上げ方かもしれませんがご子息に会社を継がせたい、と思っても、債務超過のままであるのならば本当に実権を持っているのは債権者、である会社を渡し一方で連帯保証人にはなってもらうという、あまりにも大きな負担であることを考えるべきです。
従って、債務超過であるのならば、いつまでに・どのように債務超過から脱却するのか
現在債務超過でないのならば、純資産にどれだけの余裕を持たせるのか
を、必ず承継計画に組み入れて下さい。
どうしても困難であるのならば、会社の財務戦略上、貸借対照表の形を大幅に変えるような大きなメスを入れていくことを考えなければなりません。
会社の資産、というものは貸借対照表に記載されるものだけではなく社員やお客さまという、人的なものもありますので表面上の数字だけで判断してはいけないことはもちろんのことですが、債務超過ではない、という事実は継ぐ方も継がれる方も、安心感が全く変わるということをご認識の上、今後の計画を策定していけるようになれば、ずっと承継はスムーズにいくのです。
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