『 事業再構築補助金で建設した建物は、根抵当権が設定できない? 』 -2021年09月15日号

先日の9月2日に、第2回公募の事業再構築補助金の採択結果が公表されました。

また、第3回公募は、9月21日に締め切られます。

事業再構築補助金に関係している事業者や金融機関の方々は、今も慌ただしい日々を送っていることと思います。

そうした中で、第1回目の公募で採択を受けた事業者は、次の交付申請の手続きに入っていることかと思います。

順調に進んでいますでしょうか?

補助金事務局も、初めての補助金に関する取り組みですので、いろいろと手間取っていることもあるかと思います。

期日のあることでもありますので、なかなかじっくりと進めていく、といったことは適いませんが、きっちりと交付決定まで進めていきたいですね。

さて、こうした手続きの最中、以前より気に掛かっておりました”建物費”に関することについて、念のため、共有しておきたいと思います。

この度の、事業再構築補助金は、これまでのよくある補助金と異なり、補助対象経費に「建物費」という区分が設けられました。

(公募要領より抜粋)
 https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo003.pdf

 ・建物費

①専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費
②補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
③補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費

※1 建物の単なる購入や賃貸は対象外です。
※2 入札・相見積もりが必要です。
※3 ②、③の経費のみの事業計画では申請できません。事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応の規模の投資を行うことが必要です。

建物部分を補助対象とすること自体は画期的なことで、事業者にとってはとても有難い取り組みです。

ただ、公募要領には、次のような留意事項が記載されております。

 (公募要領より抜粋)

  ・補助対象経費全般にわたる留意事項

⑦補助事業により建設した施設等の財産に対し、抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に、事前に事務局の承認を受けることが必要です。
補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に国庫納付をすることを条件に認められます。なお、補助事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められません。

上述の「留意事項」をご覧いただいての印象はいかがでしょうか?

  • 「抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に、事前に事務局の承認を受けることが必要」
  • 「担保権実行時に国庫納付をすることを条件」
  • 「根抵当権の設定を行うことは認められません」

結構、厳しい条件が付されているように感じます。

基本、不動産を取得するのに際して、金融機関からの融資を依頼すると、対象不動産に対して、抵当権や根抵当権が設定されることが多いです。

これは金融機関側から見ると、万が一、事業者が借入返済することが滞ってしまった場合、貸付金の回収を他の債権者よりも優先しようと考えるためです。

これ自体は、”一般”的な手続きであり、違和感はないかと思います。

しかしながら、補助事業は”例外”的な手続きになります。

例外的な取り組みですので、常識とされている考え方は通用しません。
あくまで公募要領が優先されます。

こうしたことから、金融機関から融資実行される条件に、抵当権もしくは根抵当権の設定が含まれている場合は、事前に当該「留意事項」のことを説明して、金融機関に理解と了解を取り付けておいてください。

建物の取得に際して、資金のすべてを金融機関の融資に頼らないといけない場合は、交渉の余地は少ないかもしれませんが、今回の事業再構築補助金は、補助率が3分の2や4分の3といった大きなものです。

そう考えれば、金融機関に頼らないといけない部分も、結果的に3分の1や4分の1になるかと思います。

このぐらいの割合であれば、根抵当でなく抵当権でいける可能性は充分でてくるのではないでしょうか?

そう考えれば、事前に、金融機関に対して、根抵当権ではなく抵当権での設定での対応の承諾を取り付けておくこと、加えて、補助金事務局に対しては、事前に、抵当権の設定をすることの承認を受けておくこと、で対応することができるかと思います。

これらのことを、事業者や金融機関が失念していると、せっかく採択を受けられても、交付決定がなされないことになりかねません。

事前にしっかりと金融機関と話し合って、補助金事務局との対応をスムーズにおこなえるようにしていただければと思います。

この度の情報が、ご参考になれば幸いです。

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