『 中小企業の事業再生等に関するガイドラインとは(その5) 』 -2024年07月10日号

これまで、タイトルにもあります「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に関するメールマガジンを、過去に4回にわたって配信してまいりました。

これらの配信において、全国銀行協会が取りまとめた「中小企業の事業再生等に関するガイドラインをご存じですか」というリーフレットを基に、各情報をご提供して参りました。

 (改めて、そのリーフレットのリンクを再掲しておきます)

今回は、東海地方の金融機関に、当該ガイドラインに沿った手続きを相談した際の事例についてご紹介いたします。

【ガイドラインの概要】

まず、改めて当該ガイドラインの概要を説明いたします。

大雑把に言いますと、これは私的整理に関する指針です。法的な債務整理ではなく、私的な債務整理にすることで、円滑に手続きをおこなえるようにしています。費用感も抑えられます。

全国銀行協会のWebサイトに、2024年1月に改定された「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が掲載されています。そこに私的整理の手続きについての概要が記載されていますので、URLを載せておきます。

上述のURL先の目次をご覧いただくと、「<第三部 中小企業の事業再生等のための私的整理手続>」の欄に、

 「4.再生型私的整理手続」
 「5.廃業型私的整理手続」

といった手続きに関する項目があるかと思います。

これを見ていただくとわかるように、私的整理の手続きには、「4」の「再生型」と、「5」の「廃業型」に区分されています。この区分は、債務整理後に事業を継続することが前提になっているか、廃業することが前提になっているかの違いになります。

【事例紹介】

今回、事例としてご紹介したいのは、取引金融機関に再生型の私的整理手続きの相談をしたケースです。

ここで登場する事業者様は債務超過の状態にありましたが、スポンサー候補先が現れたこともあり、これを機会に事業継続を前提とした再生型の私的整理手続きを検討することになりました。

公的機関としての中小企業活性化協議会(以下、活性化協議会)も、

  • 活性化協議会自身による支援の「プレ再生支援・再生支援」
  • 民間プレーヤーを活用した支援である「経営改善計画策定支援(405事業)中小版GL枠」

という手段を提供していることもあり、地元の活性化協議会に事前に相談に伺いました。

国の方針としては当該ガイドラインを推奨しており、全国銀行協会のWebサイトからも、債権者の立場となる金融機関も前向きであると捉えられます。

事業者様としては、再生型の私的整理手続きを進めるにあたって、どの手段が当社にとって好ましいのか、を相談しました。また、取引金融機関を交えて同じテーブルで協議を重ねていければと考えておりました。

しかしながら、中小企業活性化協議会からのご回答は、事業者様で直接、取引金融機関と話をしてほしい、というものでした。おそらく、この時点で金融機関側がどう回答するのかがわかっていたようです。

事業者様側としては、間に入っていただけると思っておりましたので拍子抜けでしたが、ともかく取引金融機関の担当者に説明に伺いました。

何度かのやり取りの後、取引金融機関からは本部の方もお見えになり、説明を受けることになりました。その本部の方からのご回答は、「できない」というものでした。

債務超過の状態のままで事業継続していくのは困難です。今回の再生型の私的整理手続きは、スポンサー候補の事業者が参画してくれることで、金融機関への債務減免していただく金額を大幅に圧縮できるプランです。

これが受けられない場合は廃業となってしまい、債務はほとんどすべてが貸し倒れのような状況に陥ってしまう可能性が高いことを説明しました。取引金融機関とのお取引も長いので、当然、そのことは金融機関側もわかっています。

それでも、金融機関の回答は「できません」というもので変わりません。逆に、廃業していただき、すべてを貸し倒れ処理した方が好ましい、といったものでした。

国の事業再生に対する取り組みとの温度差を感じました。

様々な金融機関もあるかと思いますが、今回の地場の取引金融機関の文化は、中小企業の事業の継続に協力・支援するよりも、債務(金融機関側にとっては債権)の減免に応じることはしない、一部減免するよりも全額貸し倒れの方がよい、といったものでした。

活性化協議会も、この金融機関の文化を知っていたのでしょう。お立場的にも難しいのかもしれません。

ともかく、再生型の私的整理手続きを進めることは難しくなってしまいました。次の方法を考えていきたいと思います。

また機会がありましたら、続報をお届けしたいと思います。

それでは、この度の情報がご参考になれば幸いです。

メールマガジンのご登録はこちらから

毎週水曜日に地域密着の話題をお届けいたします!!

↓ バックナンバーはこちらから ↓